Issue 020  石井則仁
知性で未来をこじ開けろ

photography  by Yulia Skogoreva
​interview by Naomi Mori

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東京オリンピックの開会式で踊り、さまざまな異業種とコラボレーションを行い、活動の幅を広げている舞踏家・石井則仁(山海塾所属)。今年は「コロナで疲れたこころ、アートで埋めませんか?」のテーマでクラウドファンディングに挑戦し、達成率300%という大成功を収めた。

ビジネス書を読み、大胆な挑戦を恐れない石井則仁の公式サイトを見ると、トップに「アーティストステイトメント」という芸術家としての決意表明文が掲載されており、表現することに対する情熱と思慮深さが感じられる。このようなステイトメントをサイトのトップに掲載する石井則仁はどんな人なのだろう?と、興味を惹かれてじっくりと話を聞く機会を得た。

「なんじゃこりゃ」でブレイクダンスからコンテンポラリーダンス、そして舞踏に行きつく

「舞踏」と聞いて何を連想するだろうか。全身白塗りの裸体でうごめく暗黒舞踏の印象が強く、とっつきにくい印象があるかもしれない。しかし舞踏は、日本発の身体芸術として世界で高く評価され、特にフランスでは人気が高い。その中でも頂点に立つカンパニーが山海塾だ。

 

パリと東京を活動拠点とし、世界48か国でツアーを行うなど世界的に高い評価を得ている山海塾。人間の本質に迫ったその至高の芸術性により舞踊芸術の最高峰とされている。筆者も山海塾のパフォーマンスを観て、舞踊手の肉体の美しさもさることながら、照明、美術、音楽など総合芸術としての洗練された完成度の高さ、悠久の時を感じさせる深遠なテーマ性に強く惹きつけられている。

 

メンバーである石井則仁は、2010年より山海塾に所属しつつ、ソロ活動も行ってきており、振付作品が複数の海外のフェスティバルで受賞するなど高い評価を得てきた。ストリートダンス、コンテンポラリーダンスを経て舞踏に行きつき、幅広い視野を持つ新世代の舞踏家である。2020年には草刈民代プロデュースの『CHAIN of INFINITY』公演に振付家として参加し、舞踏の新しい一面を提示した。

 

「ダンスと出会ったのは中学2年のころ、当時TRFのSAMさんがやっていた番組を夜中に見つけたことがきっかけです。当時治安の悪い地域で育っていたので、中学時代には夢も希望も持てず、打ち込める何かが欲しいと思っていました。番組で観て瞬時にこれだ!と思い、それから毎週ビデオで録画をしたものをスローモーションにしながら毎日練習していました。高校に進学した後は、ブレイクダンスをしている場所を紹介してもらって練習に行くようになり、毎晩夜中に路上で踊っていました。」

 

「その後、ダンス科が入っている専門学校に進学しました。しかし、ブレイクダンスでは仕事がないことに気が付き、ヒップホップに転向。当時ジャズヒップホップやジャズファンクと言われていたジャンルを踊り、バックダンサーとしてCM、テーマパークなどで踊っていました。今では無くなってしまった岡山のチボリ公園で、テーマパークダンサーをしたときに宿でテレビをつけていたら、ラ・ラ・ラ・ヒューマンステップスの映像作品『アメリア』がNHKで流れていたのを見て「なんじゃこりゃ」と。身体はバレエなのですが動きは全然バレエではなくて、新聞のテレビ欄を見て、これがラ・ラ・ラであることを知り、コンテンポラリーダンスという言葉に行きつき、「僕、これやりたい!」と思ったのです。22歳ごろでした。その後、辻本知彦さんにお世話になり、コンテンポラリーダンスの概念、踊り方、遊び方、即興の仕方について教わっていくなかで、東野祥子さんのBABY-Qに入ったり、大橋可也&ダンサーズに入って作品を出させてもらったり、蜷川幸雄さんや宮本亜門さんの商業演劇にも数本出演しました。」 

 

「舞踏との出会いは、DDDという雑誌に大駱駝艦や山海塾がよく載っていて、当時舞踏も全く知らなかったのですが、山海塾の『かげみ』という作品が印象的で。全員白塗りをして「あはは」と笑っているのです。それを見て「なんだこれ!」と思って。よくわからないけど舞踏を観に行こうと思ったのが始まりでした。最初は小林嵯峨さんという土方巽さんの弟子だった暗黒舞踏家を観に行き、当時バンバン動く踊りばかりしていた僕は「何これ」と感じました。観に行ってもよくわからなかった。大駱駝艦や山海塾も観に行き、大駱駝艦の合宿に参加し、よくわからないからと舞踏を学びに行き始めました。その時に以前から付き合いがあった浅井信好さんがいつのまにか山海塾に入っていて、彼から急に電話がかかってきて誘いを受けて山海塾に加入したのです。今考えると、がむしゃらに走ってきた感があり、いろんな方にかわいがってもらったと思います。」

「photo works 記憶の足跡」

「Butoh Contemporary by Norihito Ishii from Sankai Juku」

ダンス馬鹿が山海塾に入り、幅広い視野を持つように

 

1975年に天児牛大が創設した山海塾は、82年以降すべての作品がパリ市立劇場(テアトル・ラ・ヴィル)との共同制作。世界のコンテンポラリーダンスの殿堂パリ市立劇場が35年以上にもわたり共同プロデュース形式で創作を支援し続けているカンパニーは、世界でもわずかしか存在しない。演出振付だけでなく舞台美術や衣装も天児がデザインしている。世界中の観客の琴線に触れる普遍性と独自の世界観が確立されている揺るぎない名門だ。石井から見た山海塾とはどのようなカンパニーなのだろうか。そしてなぜ舞踏に魅せられたのだろう。

 

「実は山海塾の今のメンバーでもともとダンスをやってきた人は少ないのです。ファッションの世界や、演劇やデザインなど別の分野からの人が多い。海外公演などに行くと部屋飲みなどをするのですが、踊りの話ではなくいろんな話が飛び交います。メンバーとして一緒にツアーを回るようになって、いろんな本を読むようになり、いろんなところに意識が向くようになりました。それまではダンス馬鹿で、それ以外の話ができず話についていけませんでした。

山海塾は2,3年に1度新作を作るのですが、師匠の天児さんがその間にいろんなものを読んで聞いて見て食べて、そこから作品が創り上げられていると感じます。決してダンスだけで創作されてるわけではなく、僕もその姿勢を意識するようになりました。それが現在の人生の流れとなっています。」

 

「今までストリートダンスを行ってきた身としては、舞踏の身体性は東洋的に感じました。舞踏ってすべてに言葉/意味を持っていて、振付以前に型があるのです。型を羅列することで振付になるので、中からどうやってエネルギーを創出するのか、を学び、ただ踊っていた自分がなんて浅かったのだろうと思いました。意味を持つことで存在が強くなり、世界があるからこそ自分が存在する強さが出てくると感じます。説明しなくても、これって何だろう、何が起きるのだろうと思わせるところに、特に海外のお客さんは魅力を感じているのだと思います。」

SM緊縛アーティストとのコラボレーションで新境地を開く

 

山海塾での活動以外でも、石井は舞踏家、振付家として、活発に活動を行っている。ソウル・インターナショナル・コレオグラフィー・フェスティバルにて2度の総合準優勝に輝いているのは快挙だ。

 

「若い時に、作りたい作品があったので海外に持って行きトライを続けたら、幸い韓国で賞をもらうことができました。そこで海外の人たちと出会って、様々な方たちとクリエーションする機会があり、最高に楽しかったですね。コロナ禍以前は毎年、年に2回くらいは韓国に行き、韓国のダンスフェスティバルのディレクターから招聘していただいたり、共同製作で創作したり。東南アジアなど数か国で作品を招聘していただき、素晴らしい経験となりました。」

 

自身でも、DEVIATE.COという制作組織を立ち上げ、多くの企画を実施するとともに、2020年からは舞踏石井組というカンパニーも設立した。

 

「舞踏石井組は、舞踏だけでなくて身体表現で人生をもっと豊かにしたいと、全国で弟子が僕のところに来てくれるようになったものです。舞踏は来るもの拒まず去る者は追わずの芸術。もともとダンサーじゃない人たちの集まりから発祥しています。技術を付けてきたダンサーが必ずしもできるとは限らず、逆に踊りをしたことがない人がやってみたら、できてしまったりします。時代がやっと多様性、ダイバーシティに追いついたと思っています」

 

石井則仁が真にユニークなのは、ダンスに限らない新しい分野とのコラボレーションも行っていること。特にSMの緊縛のアーティストとのコラボレーションは斬新かつ興味深いものである。

 

「今までダンサーがコラボレーションしていない業種、新しいマーケットで活動ができていて、いい経験をさせていただいています。海外で緊縛はロープアートとしてSMと表裏一体になっています。緊縛師さんとセッションするときに、お話を聞くのですが、ダンサーってすごく縛られたいらしくて。バレエの方でも滞空時間を長くしていたい、ジャンプの高いところで跳んでいたいというのはバレエダンサーによく言われると言っていました。緊縛バレエは斬新かもしれませんね。基本的に舞踏は腰を落として地面で踊るのですが、SMの緊縛で宙づりにされるとそれができないので、その辺をどう見せるかを考えるのが面白かったです。僕がコラボレーションしている緊縛師・龍崎飛鳥さんは日本では5本の指に入る方です。SMとかエロティックな部分ではなく、アートパフォーマンスとしてコラボレーションを行なっています。表現者は自由体というか、表現すること自体が自由に向けたものと思っています。緊縛はそれを拘束するものなので、その辺の対比が面白いですね。」

 

「『認識のできない自由さ』という公演を京都で2回行なったのですが、龍崎さんの緊縛と僕の舞踏と、コンテンポラリーダンスと音楽での公演でした。先日は墨絵師の方も入って、褌からスタートしてどんどん全身に書いていきました。

もともと、舞踏は黎明期にはキャバレー周りでお金を稼いでところも多く、夜の繁華街とは密接にかかわっていました。90年代以降は、キャバレーなどもなくなったことで減少していきましたが、元々は親和性が高いので、そういう環境で今新しい挑戦をしています」

石井則仁インスタグラムより「認識のできない自由さ2」

「がらんどうの庭 in SHOKKAKU2019」

「わからない」芸術の魅力で、ぐうの音も出させない

 

山海塾の芸術は一度観れば決して忘れることのできない、極美の世界で魂が震わされるものである。だが、「舞踏」と聞くと観る前から難解なイメージがあり、残念ながら敬遠する人もいる。難しそうな芸術にどうやって足を運ばせるか、「わからない」ことをどうやって楽しんでもらえるか、は舞踊芸術のみならず現代美術に携わる人間にとっては永遠の課題である。

 

「石井則仁というダンサーに興味を持ってもらって、「舞踏って何?」と僕の踊りを見てもらえれば良いのですが、舞踏は暗黒舞踏のイメージでとっつきにくいところがあります。現代でダンスというと、K-POPやEXILEなどのイメージが強いです。だからこそ、もう少し多角的なところから興味を持ってもらうことが必要だと思います。僕が現在行なっている様々な分野の方とのコラボレーションはそのための試みの1つです。物理学には物理学のマーケットがありますし、SMにはSMのマーケットがあります。それぞれの円が重なりあって大きくなってくれたらいいと思っています。公演を観てもらったら良さはわかってもらえますが、そこまで足を運ばせるにはどうしたらいいのかを常に考えています。」

 

「日本の社会は、わからないと毛嫌いするところがまだありますが、わからなくていい、作り手の僕としては「何それ」と思わせることを提供できたら、10年後でも、死ぬ直前でも、あれはこういうことだったと、答え合わせをしてもらえたらいい。」

 

「「よくわからなかった」で終わらせないことが作り手のやるべきことで、「よくわからなかったけど見ちゃったね。すごかったね」という作品を作ることが課題です。

日本はアートで食べていくのが難しい国ですよね。だからこそ、どうやってビジネスにしていくか。お金欲しさとかではなくて、心を動かせば確実にお金も回っていきます。

やりたい、という気持ちだけではなく、それで誰の心が動くのか。ぐうの音も出ない作品がどのような規模でどんなビジュアルで何が必要なのか、という研究が必要です。人間の脳、思考に電気を走らせるもの。それは何なのかという研究を常に行うべきと僕は思っています。」

 

コロナ禍、怪我…ビジネスを学び、ピンチをチャンスへと発想の転換

2020年春からのコロナ禍では舞台芸術は大きな傷を負い、最初の緊急事態宣言で公演はすべてストップしてしまった。そんな中でも、石井はその期間を有意義に学びに充てていた。ダンスの枠にとらわれない幅広い視野と、旺盛な知識欲を満たすための独学、そして人脈作り。聡明で好奇心溢れ、ポジティブな人物像が浮かび上がってくる。

 

「僕はコロナで大変な時期に子供が生まれ、仕事が全部なくなりましたが、家にいて、育児に時間をかけられたのが幸いでした。仕事はないけどどうにかなるでしょう、と。人前に出て踊れなかったので、セルフプロデュースのためのビジネス本を読みあさりました。アート系だけでなく、いろんな業種の方や研究者などの友人とzoom飲みで語り合いました。不安になるのではなく、今どういう取り組みをした方がいいのか、未来に対して考え話し合っていました。オンラインのトークイベントを僕が主催して、これからどう生きるかをテーマに様々なジャンル、業種をまたいだ方を呼んで話を聞いて、お金ではない価値をみんなで共有することを目指していました」

 

コロナで疲れたこころ。アートで埋めませんか?―クラウドファンディングへの挑戦

 

その話し合いの中から、クラウドファンディングのアイディアが生まれた。慢性的な緊張状態の中で暮らしている人々に対して、自身の作品を通じて、そんな空気を緩めるための空間を届けたいという想いを具現化したものだ。

 

「クラウドファンディングの運営には僕の他にコンサルの方と制作担当がいて、3人で行ったことで成功できました。舞踏はニッチなものです。世間は数字を信じるので、数字で成果を出さないといけません。今までの、ものが良ければそれでいいというやり方は通用しなくなっています。もともとは舞踏に興味がなくても、この達成率の数字を見て興味がわく人はいるのではと思います。この達成率を果たすことができて安堵しました。」

 

現代人は目に見えない圧力にさらされながら生きており、特にコロナ禍においては心の緊張状態が高まっている。その中で、石井は、自身の作品がひとつ深呼吸して、次に向かうための時間を作るきっかけとなれば、自らの「心のゆとり」について考えを巡らせる時間になれば、それが社会における寛容さや、次に進むためのポジティブな想いを育むことに繋がるはずと信じて、このプロジェクトを立ち上げた。

 

クラウドファンディングでは、彼の新作舞踏『朽ちてなお』を世界に向けて映像配信するということがまずリターンとして用意されている。仏教絵画九相図をモチーフにして、「動かない踊り」として死後の肉体を表現し、「そして、今、あなたはどう生きるのか」を問う『朽ちてなお』は、大きな怪我をしてしまったことから生まれた作品だ。

 

「「死を意識する」は僕の作品作りに共通するテーマです。僕は今年右足の前十字靭帯を切ってしまって8月頭に再建手術を行いました。リハビリに1年かかるような大けがで、今でも膝を曲げきることはできないですし、1か月前に松葉杖を卒業したくらいです。いろんな仕事も決まっているなかで、踊れない身体になってしまいましたが、僕の生業がバレエやコンテンポラリーではなく、舞踏だったことに最後は救われました。舞踏だからこそ、右膝を使わないで自作を表現することができるのではないか、こんなことで自分の表現をやめる必要はないと前向きに考え進むことができました。この機会に踊りの概念を変えるような「踊らない踊り」を作ろうと新作『朽ちてなお』を創り、10月の頭に札幌で公演を行いました。いろんな評価をいただき、リピーターの方も非常に多く、良い公演だったと感じています。(『朽ちてなお』は)基本僕が寝たきりで終わる作品です。さすがに膝の靭帯を切ったときには落ち込みましたが、同じケガで踊れなくて落ち込んでいる人もいるだろうし、そういう人に同じエネルギーを与えられたらと。この発想の転換ができたことは幸いでした。」

 

また、ユニークなリターンとしては『脱RIKIMI動画』がある。石井が舞踏を踊る上で最も大切にしている「余分な力を抜き、最小限のエネルギーで体を動かす」ための極意を伝授するものであり、自宅で実践できるためリターンとして人気を呼んだ。

 

「舞踏の定義というのは舞踏家によりそれぞれ違うのですが、僕が一番舞踏を学んでいるのは山海塾で、根本は師匠である天児さんのマインドが僕の中で生きています。それを学びながら今の時代に合わせて、2018年ごろに「脱RIKIMI」を創りました。東洋的な感覚で体と心をほぐしていくための身体瞑想メソッドです。これは、舞踏のワークショップでもなく、動きながら瞑想していくものですが、自分の身体・自分の内面を内観し、沈殿していきながら、自分を自覚化し、思考と身体をすっきりとさせていくものです。クラウドファンディングでも、ダンスや芸術が日常にない方達も含め、多くの方にリターンを選んでいただけました。

メソッドとしての脱RIKIMIの構築は今後も継続していきたいと思っています。僕の舞踏の考え方をベースに余白を創っていく瞑想メソッドなので、構築の方向によって仕事としても広がりがあると思うのです。そういう意味でアーティストが仕事として続けていけるところまで発展していけば面白いなと僕は感じています。」

 

他にも、白塗りをして街中を散歩してオフ会に参加するなど、他にはないような楽しいリターンが目を引いた。これはなかなか体験できない貴重な機会である。

 

「白塗りをやってみたい人は多いと思います。ここから舞台に、舞踏に興味を持ってもらう、ということもできると思っています。子どものころに、なんだかわからないけど大駱駝艦の金粉ショーを見て、大人になってから思い出して改めて舞踏にはまるという話をちょこちょこと聞きます。そういうイメージでもあります。」

「石井則仁「コロナで疲れた心をアートで埋める」クラウドファンディング紹介動画」

「キックオフイベント「コロナで疲れた心をアートで埋める」クラウドファンディング」

「朽ちてなお/Kuchitenao」

ダンスを踊り続けるために、やりたいことをやるために学び続ける

 

このクラウドファンディングの企画を通しても、石井則仁が従来の舞踏家、ダンサーの概念に囚われず、よく勉強し、幅広い視点を持って芸術の未来に思いを馳せているのが伝わってくる。芸術に対する支援が少ない日本という国で、さらにコロナ禍が襲い掛かったときに、どのようにして芸術家として生活し、そして芸術を愛好する人たちのすそ野を広げて行くか、そのためにはセルフブランディング、そして意識改革が重要であると、彼はこの機会に学びを進めていった。

 

「コロナ禍の前から、アーティストが舞台上だけに立ってパフォーマンスを見せるのはもう古いのではないかと感じていました。ダンスだけで生きていけたらいいのですが、続けていくことには大変な努力が必要です。生活やお金の問題によって続けていくことが困難になるケースは珍しくありません。だからこそ、ダンスを踊り続けるために、やりたいことをやるためにビジネスを学びました。経済的問題に直面するダンサーはブランディングを学んだらよいと思うのです。」

 

「公演だけでなく、今後どうやってファン経済成長させていくかが自分の課題です。自分のすべてが僕のコンテンツなので、お客さんと面白いことをシェアリングして、いろんな業種の方を巻き込んでいきます。認知が増えないと創客も増えません。舞踏だけでなくていろんな芸術、ダンスの楽しみ方、多様な楽しみ方を提供していけるようになりたいです。」

 

この未曽有の危機に立ち向かうダンサーたちへのエールも送る。

 

「ダンサーは踊ってなんぼ、知られてなんぼだと思います。コロナ禍で気が滅入っている人も多いと思いますが、そんな時こそ身体を動かしてほしい。踊る側に気持ちの余裕が出てきたら、自分の目の前のお客さんの心がどう動くかとか、どう喜ぶのかということを考えて踊る。そうすることでいろんな環境が変わってくると思います。皆さん、負けないで踊り続けてほしいです。」

少しずつ日常が戻りつつある。石井は、今後もダンスフェスティバルへの振付作品の提供、山海塾の活動、SMやバーレスクとのコラボレーション、ガラ公演への出演など、予定が目白押しだ。石井は好奇心と鋭い知性を発揮し、柔軟な発想を通して精力的な活動を続けて、舞踏家、ダンサーの概念を塗り替えていくことだろう。

photography  by Yulia Skogoreva
styling by 東 友理花
support by 田中 千紗子

​interview by 森 菜穂美

石井則仁

©︎Makiko Ishii

石井則仁/Norihito Ishii

プロフィール
17歳からストリートダンスを踊り始め、様々なダンスコンテストにて入賞。数々のアーティストのバックダンサーやCM・テーマパークダンサーなどで活躍後、2006年活動場所を舞台空間へ移行。
過去に様々なダンスカンパニーや振付家の国内外の公演に参加する傍ら、蜷川幸雄や宮本亜門の演劇作品にも出演。
2006年よりコンテンポラリーダンスを辻本知彦に師事。2010年より舞踏を天児牛大に師事。 
2010年 世界45カ国のべ700都市以上で公演をしている舞踏カンパニー山海塾に在籍し、舞踏を天児牛大に師事。自身の活動も含め27カ国75都市以上で公演を行う。近年では「卵熱」「HIBIKI」「KAGEMI」のソロパートも担う。
2021年、元バレエダンサーの草刈民代が芸術監督を務めた「CHAIN of INFINITY」公演に振付家として参加し、舞踏の新しい一面を提示すると共に、多大な評価を得る。
2017年より空間美術展&舞踏公演「がらんどうの庭」を開催。松本・札幌にて行い続け、2020・2021年には長野県松本市の松本PARCOにて開催。舞踏作品「がらんどうの庭」はスペインでも公演を行う。

​Norihito Ishii Official Web Site 

Official Instagram

Twitter

​NI Butoh channel/石井則仁 舞踏 チャンネル

<公演情報>

『With HARAJUKU CONTEMPORARY DANCE FESTIVAL』
2021年12月4日(土)

12:30-(メインパフォーマンス)
15:00-(庭プロジェクト)

17:00-(メインパフォーマンス)
 

[メインパフォーマンス](各回約1時間15~30分)
WITH HARAJUKU HALL
前売、当日チケット4,500円

[庭プロジェクト](各回約20~30分)
WITH HARAJUKU PARK 2F
観覧無料
※狭い場所になりますので人数に限りがございます。譲り合ってご観覧下さい。
※雨天の場合は WITH HARAJUKU HALL での上演を予定しております。( 特設ページにてご確認下さい。)

[イープラス動画配信]
動画配信チケット2,800円
(全作品を12月25日-31日の期間に視聴可能)

 

特設ページ

 

 


『ブラッククリスマス @博多サイエンスホール』

2021年12月23日(木)

  [会場] 福岡市科学館 6Fサイエンスホール
[演出]石井則仁 

[出演]永井直也 / 松井英理 / 加隈兎沓 / 渡邉尚 / 乗松薫 / 鉄田えみ / 菅原信介 / トムG / 大橋佳奈 / 今川梨香 / 花田想乃子 / 岩口侑惺 / 星野朱璃 / 山下ういか / 星野友利 

[振付]石井則仁

チケットはこちら