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© 2018 by Alexandre Magazine

Issue 011  ジュリアン・マッケイ

新世代リーダーの理想と行動力

Jacket ¥360,000 Pants ¥60,000/ACUOD by CHANU(ACUOD INC.)

 ミハイロフスキー劇場バレエの来日公演で初来日を果たした、21歳のジュリアン・マッケイ。貴公子そのもののルックスと、新世代らしい積極的な情報発信でInstagramのフォロワーは12万人を突破し、バレエファンのみならず、感度の高い若者たちにセンセーションを呼んでいる。

 

 アメリカのモンタナで生まれたジュリアンは、ボリショイ・バレエ・アカデミーに11歳で入学(外国人では当時最年少記録)し、ロシアのフル・ディプロマをアメリカ人として初めて獲得。ローザンヌ国際バレエコンクールではスカラシップを獲得して英国ロイヤルバレエで研修生として踊り、ミハイロフスキー劇場バレエに入団。バレエ団史上最年少でソリストとなり、すぐに主演するようになった。

 日本初演となるメッセレル版『パリの炎』に主演後には人気が炸裂。容姿に恵まれているだけでなく、若々しく情熱的な演技、ボリショイ・アカデミー仕込みのテクニックで実力も備えていることを証明した。

 そのジュリアンをいち早くAlexandreはキャッチ。最先端のモードを着こなして今までに見せなかった表情を見せるとともに、彼自身の大胆なアイディアやインプロヴィゼーションを盛り込んでの撮影は白熱した。インタビューには、彼と共にボリショイ・アカデミーで学び、今は誰よりも美しく兄を撮影するフォトグラファーとして活躍する弟ニコラスも参加し、兄弟の強い絆も実感した。

Coat ¥50,000 Corsages ¥80,000/Noir Fr(Noir Fr)

Earcaff[右]¥20,000[左]¥12,000 Rings 上から¥58,000 ¥35,000 ¥80,000/JUSTIN DAVIS(JACK of ALL TRADES PRESS ROOM)

Pants/stylist personal items

 ローザンヌ国際バレエコンクールのファイナルでいち早く注目されたジュリアンだが、実は今回は初来日。彼が渋谷の街に降り立ち、Instagramに投稿するや否や、この世のものではないほどの美しさと存在感で話題を呼んだ。

「東京はとても文化的な街で驚きました!ニューヨークのタイムズスクエアと共通点はあるけどあくまでも日本的なのです。今まで、中国でのプロジェクトにたくさんの時間をかけてきましたが、日本は今回が初めてです。想像していたのとまったく違っていて、他のどの国とも違っていてアメイジングでした。ぼくは小さい時にロシアに移って、生まれ育ったアメリカとは文化が全く違っていてカルチャーショックを受けたのですが、同じような衝撃です。新しいことを学ぶ喜びがありました。全く知らなかったり理解できなかったりしたカルチャーに出会うのは楽しいものです。日本については、もっともっと知りたいと思います。新しい観客に出会えることもわくわくしますね」

Coat ¥50,000 Corsages ¥80,000/Noir Fr(Noir Fr)

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ステロタイプを崩し、王子ではない一面を見せたい

 

 今回のミハイロフスキー劇場バレエ来日公演で、ジュリアンは『パリの炎』(ミハイル・メッセレル振付)と『眠りの森の美女』(ナチョ・ドゥアト振付)に出演。両方とも日本初演の話題作だ。『パリの炎』は古き良きソビエトバレエの血沸き肉躍る活劇、『眠りの森の美女』は現代バレエの鬼才で芸術監督でもあるナチョ・ドゥアトが、古典とコンテンポラリーを見事に融合したと高い評価を得た。

 

ジュリアン 「日本での初めての舞台を控えて、ものすごく興奮しています。『パリの炎』のフィリップ役はぼくのキャリアの中でも大きな意味を持つ役柄です。この役を演じてファースト・ソリストに昇進しました。世界中に見せたい素晴らしい作品です。メキシコやフランスでも踊っています。ぼくは学生時代から王子と呼ばれていましたが、それが嫌でした。だから『パリの炎』を踊って、こんな役もできることを証明したかったのです。ステロタイプを崩したかった。ぼくはどんな役でもできるということを見せたい。王子も踊りつつ、いろんなスタイルを制覇していることはとても楽しい」

ジュリアン 「『パリの炎』は、どんなことがあっても最後には勝つ、というテーマが素晴らしいと思っています。ぼくも決してあきらめずに努力したことで、今の成功をつかむことができたから。もちろん、今までに失敗もしてきていますがじっとこらえて頑張りました。『パリの炎』は忍耐力の大切さについて伝えている作品。革命を起こしているので、舞台上ではすべての感情を解き放っています。パ・ド・ドゥが有名ですが全体の作品も素晴らしい。悪くて偉い人とのソードファイトもありますが、その相手は4年間ぼくの教師を務めているミーシャ(ミハイル・シヴァコフ)なので、すごくクールでしょう?師匠と舞台上で戦うのですから!他にもたくさんいい場面があって、作品の冒頭では役に個性を加えるようにしています。ミハイル・メッセレルは誰もが知っている部分と、演劇的なところやキャラクターダンスなど知られていない部分をうまく合わせるという仕事をしてくださいました。楽しい作品です」

 

 ジュリアンが『パリの炎』で共演したのは、圧巻の超絶技巧で知られる名花オクサーナ・ボンダレワだ。

 

ジュリアン 「今回一緒に踊るオクサーナ・ボンダレワはまさに炎のようなバレリーナで、一緒に踊っていてもとても楽しいです。男性ダンサーとして、バレリーナを美しく見せることは大好きです。今はいいパートナーであることを優先するダンサーは少ないと思います。『眠りの森の美女』も『ジゼル』もパートナーリングの能力がとても大事です」

 

ニコラス 「パートナーリングの能力は、コンクール・ダンサーとプロのダンサーとの違いを作るものですね。バレエを通して相手とつながることができる人こそがプリンシパルダンサーにふさわしいと思います」

Knit ¥54,000/YOHJI YAMAMOTO(YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM)Skirt ¥56,000/ACUOD by CHANU(ACUOD INC.)

Bracelet ¥180,000/JUSTIN DAVIS(JACK of ALL TRADES PRESS ROOM)

Knit T-shirt ¥36,000 Pants ¥42,000/ISSEY MIYAKE MEN(ISSEY MIYAKE INC.)

Kimono T-shirt ¥427,000 Skirt ¥56,000/ACUOD by CHANU(ACUOD INC.)

ファルフ・ルジマトフというインスピレーション

 

ジュリアン 「『眠りの森の美女』では今回はゴールドの王子を踊ります。この役は踊るのが久しぶりで、普段は青い鳥を踊っています。このプロダクションは本当に美しい。ナチョ・ドゥアトはとてもインテリジェントで、ステップをエレガントで美しいものに作り上げています。2幕最初にあるソロを踊るために、ナチョとはたくさんリハーサルをしました。キャラクターの感情をダンスで見せる才能が素晴らしいと思います。彼の振付は回転や切り替えなど予想を裏切る動きがあり、クラシカルなのですが新しくて、日本の観客の皆さんも気に入ると思います。またナチョの振付では、ダンサーたちは頭を上げ過ぎず実際に視線を交わすことが大事です。よりパーソナルな印象を与えます」

ジュリアン 「『眠りの森の美女』ではカラボス役でファルフ・ルジマトフが出演します。バレエ界のレジェンドである彼が毎日のクラスレッスンを受けている劇場でぼくが働けるのは光栄なこと。ぼくはいつもバレエ団のスタジオではクラスレッスンの2時間前に来て団員で一番乗りなのですが、朝到着するとすでにファルフは30分前からそこにいてウォームアップやワークアウトをしています。彼よりも早く来られたことは数えるほどしかありません。ほかのみんながまだ寝ている時間に!そのため、今も彼は美しい肉体を維持していますし、真のアーティストだと思います。彼はまた、自分自身のスタイルを確立したアーティストですね。また、ぼくを助けてくれていますし、まさにロールモデルというべき偉人ですね」

ニコラス 「ぼくが初めて観たプロのダンサーで、自分がダンサーになりたいと思うきっかけになったのがファルフなのです」

 サンクトペテルブルグ第二の劇場で、日本では以前はレニングラード国立バレエとして知られて頻繁に来日していた名門ミハイロフスキー劇場。ここに入団したことで、ジュリアンは大きく羽ばたいた。

ジュリアン 「ミハイロフスキー劇場はぼくにたくさんの機会を与えてくれました。ケフマン総裁、ミハエル・メッセレル、そしてクリギンさんなど教師の皆さんには感謝しています。アーティストとして成長するチャンスを与えてくれました。ぼくは若い時からソリストとしていろんな役を踊ることができ、舞台にもたくさん立つことができました。そんな経験ができる場所は他にはほとんどありません。おかげで自分のダンサーとしてのブランドも確立でき、海外でゲスト出演し、自分が主催する公演もできるようになりました。ダンサーのキャリアは短い。とても若い年齢で始まり、まだ若いうちに引退しなくてはならない。でも初めてミハイロフスキー劇場に来た時、ファルフに会って“これも踊りたい、あれも踊りたい”と言ったら、もちろんだよ、どうして踊れる身体を持っているのにしまっておくの?と。いかにも彼らしいと思いました」

Jacket ¥299,000 Skirt ¥56,000/ACUOD by CHANU(ACUOD INC.)

Jacket ¥360,000 Pants ¥60,000/ACUOD by CHANU(ACUOD INC.)

特別な家族の絆で結ばれた、バレエダンサー兄弟姉妹

 

 ジュリアンと2歳年下のニコラスは来日中も一緒に行動するなど、とても仲良し。彼らの上には二人の姉、マリア・サーシャ・カーンとナディア・カーンがおり、二人ともバレリーナとしてヨーロッパで活躍している。家族は特別な絆で結ばれている。

 

ニコラス 「ジュリアンは、ぼくが3歳くらいの時から僕にインスピレーションを与え続けています。ダンスの面でも、それ以外の部分でも。兄弟という贔屓目はあるにしても、彼は世界中の若手ダンサーの中でもベストの一人だと思っています。今も毎日ぼくに刺激を与え続けてくれています」

 

ジュリアン 「ダンサーという仕事はストレスを感じたり不安になったりすることもありますが、どんなことがあってもニコラスはぼくのそばにいて支えてくれるのがわかっているので、大きな心の支えになっています。どんなクレイジーな状況にあっても、不安を感じることはありません。彼はどんなに困難な目にあっても決してあきらめない強さを持っている人です。いつも冷静で落ち着いていて、絶対にやり遂げられることを知っています。こんな弟がいてぼくは幸せです。小さい時にぼくは彼に、挑戦してみなさい、って言っていたのですが、実際に彼はチャレンジをする人になりました。ぼくと彼は正反対で、ぼくはたまにつまずいたりすることもありますが、ニコラスはいつも安定しています。二人はとてもいいチームです」

 

ジュリアン 「ぼくたち家族はとても仲が良く、お互いに支え合ったから、ここまで来ることができたのだと思う。バレエを学ぶためにロシアに渡ったのは本当に幼い時だった(11歳)から、家族のサポートは本当に力になりました。小さい時に海外に行くことは怖くありませんでした。両親は、人生においてはいろんなことを探検することが一番素敵なことだと、まだ小さいぼくたちに教えてくれていたのです。世界が広がりました。姉たちは、ぼくがワシントンDCのキーロフ・アカデミーに通っている時にアドバイスを送り続けてくれました。ニコラスは今ぼくの写真を撮ってくれていますが、子どもの頃は、うちの家族ではニコラスにはカメラを渡すな、と言われていました。家族写真を撮ろうとして壁の写真を撮ったりするからです(笑)。」

クリエイティビティの波を世界中へ広め、人々を結び付けたい

 

 そしてこの夏、ジュリアンとニコラスはマッケイ・プロダクションズというプロダクションカンパニーを設立し、バレエにとどまらず様々な企画を進めている。21歳と19歳の若さでこのようなことを始めるのは驚きだ。

 

ニコラス 「ダンサーのキャリアは短いだけに、ぼくたちは自分たちのプロジェクトを始めました。バレエだけにとどまらず、アート全般のプロジェクトです」

 

ジュリアン 「いろんなことをやりたい人々に出会ったら、一緒にやりたい。だからプラットフォームを作ったのです。“クリエイティビティは伝染するから、もっと広げよう!”というスローガンのもとに(Creativity is contagious, so pass it on)」

 

ニコラス 「先日は、ロシア美術の展覧会をサンクトペテルブルグで開催しました。ロシアに来て以来、ぼくたちはソヴィエト美術にとても惹かれてきました。今まではあまりロシア以外では知られていない作品も多かったのです。宗教画も多くて、旧ソ連時代には多くは破壊されてしまいましたが、それだけにますます興味深いと思いました。例えば教会にはイコン画がありましたが、共産主義の時代には教会の中が工場に変えられたりしたのです。そんな時代を経ても生き延びた作品というのはとてもドラマティックです」

 

 ジュリアンも、ニコラスもその若さに似合わず、どうやってバレエを、アートを世界に広げて行き、人々を結び付け、そして次世代へとつないでいくかを真剣に考えている、とてもシリアスなアーティストだ。

 

ジュリアン 「アートというのはどんなことがあっても生き延びるものだと思っています。今芸術にとって困難な時代でもありますが、より多くの人が芸術に関心を持ち、関わり合うようにするには、今までと違った発想やアプローチが必要だと思います。アートは値段が付けられない、非常に価値があるものです。だからぼくたちは創造し続けなければならないし、周りを巻き込んでいきたい」

 

ニコラス 「アートは人々をつなぐ力があります。国境を越えるもので、特にダンスには言葉もいらないので、そのような力があります。資金を獲得することも重要ですが、アートそのものがかけがえのないものですね。またダンスは、反応をコントロールできないという意味で表現の自由の究極的なものでもあります」

Jacket ¥130,000 Pants ¥146,000/YOHJI YAMAMOTO(YOHJI YAMAMOTO PRESS ROOM)

SNSを通じファンと交流。観客がいるからこそ頑張れる

 

 12万人のフォロワーがいるジュリアンのInstagramのフォロワー。ロシアにいる時に家族に近況を伝えるために開設したアカウントが、いつの間にか大きなムーブメントへとつながっていった。一方的に発信するだけでなく、ジュリアンはSNSを通したファンとの交流にも積極的だ。

 

ジュリアン 「先日こんなことがありました。ファンが楽屋口でぼくのところにやってきて、人生でこんなひどいことが起きて絶望したと言ってきたのです。でも僕によってインスピレーションを得て、生きようと思ったと。一つのことにフォーカスしてキャリアを構築していると、やるべきことをやっていることが、とても大事なことであるということを忘れそうになりますが、自分がなぜ舞台に立っているのか、その意味が分かった気になります。だからこそ、ぼくは舞台の最後に観客の皆さんに心を込めてお辞儀をするのです」

 

ニコラス 「ダンサーであるということは、一歩間違えると自分自身というものに囚われて自己満足してしまう危険性があります。でも、こんなことがあると、なぜ自分はダンサーとして踊っているのか、ということを思い出させてくれます。ぼくたちは観客のために舞台に立っているのです」

 

ジュリアン 「観客の皆さんのことを思うと、力を与えられた気になります。スターダムなどの虚飾の世界を忘れて、本当に自分がやりたいことに集中すべきです。今の時代はソーシャルメディアを通して、家にいなからにして何千もの人々とつながることができます。SNSを通して応援されているという感覚も得られます。ファンとの交流のベースを作りたいからこそ、プロダクションカンパニーも設立したのです。とてもシンプルなことですが、アートを通して変化の可能性がここにあるというのは素晴らしいこと」

若者たちに、どんな可能性が待っているのかを見せるのが夢

 

 既に多くの作品に主演し、ロシアの人気番組「ビッグ・バレエ」に出演し、海外のガラ公演などでも活躍しているジュリアン。まだ若い彼の、これから彼の成長していく様子を観ることができるのはファンにとって大きな喜びだ。これからはどんなアーティストを目指していくのか。

 

ジュリアン 「人生の大きな目的としては、バレエを、メッセージを伝えるための媒体にしたいと思っています。様々な世界を人々に見せたい。アートを通して達成でき、得られるものは本当に大きいから、その素晴らしさを皆さんに伝えたいのです。短期的な目標としては、たくさんのカンパニーにゲスト出演し、もっといろんな人たちと仕事ができたらと思っています。でもダンス、バレエはぼくにとってエキサイティングなものなので、何よりもたくさん舞台に立ちたいです」

 

ジュリアン 「長期的には、多くの人たちにとってのインスピレーションとなりたい。今の若者たちに、どんな可能性が待っているのかを見せたいですね。若い時には道を見失いそうになったり苦しんだりすることが多いと思います。ぼくは幸運にも、小さい時から、本当に才能があるのかどうかわからないバレエにおいて、両親や姉たちに支援してもらえました。小さい年齢での決断を応援してくれ、ロシアに行かせてもらえました」

ジュリアン 「俳優業にも挑戦したいですね。バレエを踊っている時には、多くの感情を経験するので、演技に活かせるはずですし、演技を通して自分も成長できると思います。この感情をよりパワフルなものに昇華したい。ボリショイ・アカデミーではスタニフラスキーのメソッドでの演技のクラスがあり、素晴らしい教師たちに学ぶことができました。ぼくの人間としての成長にも役立つと思います。ダンサーについての映画やドキュメンタリーを観るのも大好きです。ルドルフ・ヌレエフの亡命を描いた映画『ホワイト・クロウ』に主演したオレグ・イヴェンコは友人です。ダンサーの人生についての映画はもっとたくさん観たいし、そういった映画によってバレエを観に行く人も増えるはず」

 王子様ではない『パリの炎』のフィリップも意外な配役だったが、ジュリアンが挑戦したい役柄は意外なものが多い。

ジュリアン 「『オネーギン』のタイトルロール、『マノン』のデ・グリューなどドラマティックな役を演じたいと思っています。狂気に陥るかどうかのギリギリのところを表現したい。とても極端なものというのが一番面白いとぼくは思っています。悪役にも挑戦したい。例えば『スパルタクス』のクラッススのような。それから振付家と新作のクリエーションにも携わりたい。大きな話題となったセルゲイ・ポルーニンの「Take me to Church」を振付けたジェイド・ヘイル・クリストフィと作品を創っているところです。同じ価値観やエネルギーを共有できる人たちとつながることができるのはとても幸せなことです。そういった人たちとスタジオに入ると、花火のような感情の爆発を起こすことができ、ジェイドとはそんなクリエーションができています」

 彼らは次世代育成についても、すでに考えている。

ジュリアン 「今年の夏、ぼくたち兄弟姉妹は故郷のモンタナでYellow Stone International Festivalというバレエフェスティバルを始め、地元の子どもたちに向けてのバレエクラスを開いています。この地域にもっと芸術を持ち込み、ぼくたちが世界の舞台で得たものを持って帰りたい。たくさんの知識や経験を得ても、次の世代へと渡していかないのは意味がありません」

ニコラス 「ぼくたちは幸運だったのは、ダンサーとして成長するのにちょうどいい年齢で正しい訓練を受けられたことです。この夏、モンタナでとても才能があり身体条件にも恵まれた男の子に出会いました。ワガノワ・バレエ・アカデミーに推薦状を送ったところ、入学できることになりました。ぼくたち兄弟以外で、モンタナ出身でバレエダンサーになろうとした人は彼が初めてです。モンタナは自然に恵まれ、山々やバイソンがいてスキーも楽しめる美しい場所ですが、バレエはまったくありませんでした。ぼくの姉たちが道を切り開き、今もアドバイスをしてくれます」

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二人の夢はどんどん広がっていく。

 

ニコラス 「ぼくは最近韓国に行って、ユニバーサル・バレエ団にゲスト出演していたウラジーミル・シクリャーロフ(マリインスキー・バレエのプリンシパル)を撮影してきたところです。『春香伝』という韓国版の『ロミオとジュリエット』のような物語のバレエです。ワロージャ(シクリャーロフ)はぼくたちのプロダクションと契約をしているのですよ」

ニコラス 「中国などでの公演のプロデュースを行っており、また2本のドキュメンタリーを製作中です。一本はジュリアンについての、もう一つは別の男性ダンサーについてのものです。ダンスを基に、ファッション、映画などをつなぎ業界を横断するプロジェクトをやっていきたい。実験的なこともやっていきたい。ビジネスとして成功したいと思っていますが、周りのクリエイティブな人々に手を差し伸べ、ぼくたちが一緒に仕事をしたい人たちと共に夢を追求したい」

ジュリアン 「自分がやっていることに本当に情熱を持って取り組んでいるのなら、良い仕事ができるはずです。さらに協力してくれる人たちが増えてどんどん可能性が膨らんでいます。世界を旅して新しい人たちに出会える、バレエダンサーという仕事が好きです」

 

 ジュリアン・マッケイは、最近増えているInstagram発のバレエ・スターでもなければ、単なる美しい王子様ではない。バレエを、芸術を愛し、この若さで次世代育成も真剣に考え、広く世界をつないで人々に希望を与えていこうという理想と行動力を備えた新世代のリーダーだ。次に来日する頃には、さらに存在感を増し、バレエの世界をより良い場所へと変えているだろう。

STYLIST : Yoshi Miyamasu (SIGNO)

HAIR & MAKE UP : KOUTA(eight peace)

EDITOR & PHOTOGRAPHER : 井上ユミコ

INTERVIEWER & TRANSLATOR & WRITER :  森菜穂美

SPECIAL THANKS TO  :  光藍社 

Julian Mackay, Dancer
 

ジュリアン・マッケイはボリショイ・バレエ・アカデミーをフル・ディプロマ取得して卒業した最初のアメリカ人である。イスタンブール、ソチ国際バレエコンクールとYAGP(ユース・アメリカ・グランプリ)で金賞、北京国際バレエコンクールで銅賞を受賞するなど国際バレエコンクールで連続して5つのメダルを取得した。トップの成績でアカデミーを卒業し、卒業公演ではロシアの舞踊批評家には「アポロそのもの」と評価され、ボリショイ劇場で多くの舞台に立った。2016年のローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得し、17歳で英国ロイヤル・バレエに研修生として入団した。その9か月後、ミハイル・メッセレルの招きによりミハイロフスキー劇場バレエにセカンド・ソリストとして入団した。

『パリの炎』に主演後、19歳でジュリアンはファースト・ソリストに昇進し、劇場の主な作品のほとんどで主演した。ジュリアンはIMGTalent Worldwideと契約している。Paper Magazineで「25人のもっとも美しい人々」に選ばれ、Teen Vogue、L'Uomo Vogue, L'Official Ukraine,  id Magazineなどの雑誌で特集され、20万人の中からケンダル・ジェナーに選ばれてLOVE Magazine Londonに登場した。Style Russiaでは10ページの特集が組まれ、Esquire China、Numero Chinaにも登場している。


ジュリアン・マッケイのニューヨーク・ファッション・ウィークでの「ショパン・ダンス」パフォーマンスは、世界中のファッションウィークのトップ10の印象的な瞬間に選ばれた。中国でのトレンド1位になり、上海でのヴィクトリアズ・シークレットのショーに出演した。現在彼はモスクワのロシア舞台芸術アカデミー(GITIS)で修士号取得に向けて学んでいる。初めての全幕振付作品“Warrior of Light”(ロシアの著名な画家で哲学者であるニコライ・リョーリフの生涯についての作品)は年内に初演予定。ジュリアン・マッケイは、弟ニコラスとフレンチブルドッグのレオと共に、美しいサンクトペテルブルグに住んでいる。

Nicholas Mackay, Artist

ニコラス・マッケイは権威あるワガノワ・バレエ・アカデミーとボリショイ・バレエ・アカデミーで学んだ、クラシック・バレエのダンサーである。マリア・サーシャ・カーン、ナディア・カーン、ジュリアン・マッケイと共にバレエダンサーとなった兄弟の末っ子である。9歳でモンタナからモスクワに移り、ボリショイ・バレエ・アカデミーに入学した最年少の外国人となった。学生時代にマリインスキー劇場、ミハイロフスキー劇場の両方で踊り、『くるみ割り人形』でプロのダンサーとしてブリュッセルとベルリンで踊り、またボリショイ劇場でのユーリ・スメカロフ振付の『 Moidodyr』世界初演にも出演した。


ニコラスは学んできた知識を人に分け与えることが大好きで、バレエ教師としても活動しており、最近ではバリ、ジャカルタ、モンタナで「バレエ・レガシー・マスタークラス」の一環としてクラスを教えている。


ニコラスのお気に入りの役は、兄ジュリアンが振付けた全幕作品“Warrior Of Light”で演じる予定の、ロシアの画家、哲学家ニコライ・リョーリフである。この作品は今年初演される予定で、2018年にロンドン・コロシアムで上演された抜粋では振付助手を務めた。


15歳という若さでニコラスは、セルゲイ・ポルーニンに招かれ、ポルーニンとナタリア・オシポワが出演した「プロジェクト・ポルーニン」の写真を撮影した。これらの写真は世界中で話題を呼び、写真家として知られるようになった。上海でのヴィクトリア・シークレットのショー、グリシコ・ロシアの写真や映像も撮影した。ボリショイ・バレエで活躍したウラジーミル・ワシーリエフ、ワガノワ・バレエ・アカデミー、Sobaka Magazine, Esquire China, TIMEOUTでも撮影し、「ダンスオープンのロシアン・スター」中国ツアーのオフィシャルカメラマンも務めた。


ニコラスは兄ジュリアン同様、ロシア語を流ちょうに話す。ギリシャ神話、ローマ神話、ガブリエル・ダンテ・ロセッティ、神による破壊や聖書由来の風景画で知られるジョン・マーティンにインスパイアされている。


ニコラスは才能があり霊感を与える人々を撮影しに世界を旅し、新しい冒険をいつも求めている。

<ミハイロフスキー劇場バレエ 公演概要>

 

『パリの炎』

全3幕 作曲:B.アサフィエフ 振付:V.ワイノーネン/改定振付:M.メッセレル

日程:2019年11月21日(木)15:30/19:30

料金(15:30回):SS席22,000円 S席20,000円 A席17,000円 B席14,000円 C席 10,000円 

         D席7,000円

料金(19:30回):SS席24,000円 S席22,000円 A席19,000円 B席16,000円 C席12,000円

         D席9,000円

 予定出演者:

■15:30公演

ソリスト:アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ、イワン・ザイツェフ、イリーナ・ペレン、ヴィクトル・レベデフ ほか

管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 

■19:30公演

ソリスト:オクサーナ・ボンダレワ(ゲスト)、ジュリアン・マッケイ、イリーナ・ペレン、ヴィクトル・レベデフ ほか

管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

ミハイロフスキー劇場バレエ

 


『眠りの森の美女』
全3幕プロローグ付 作曲:P.チャイコフスキー 振付:N.ドゥアト

日程:2019年11月23日(土・祝)17:00・24日(日)11:30/16:00

料金:SS席24,000円 S席22,000円 A席19,000円 B席16,000円 C席12,000円 D席9,000円


予定出演者:
■11/23(土)17:00公演
 ソリスト:アナスタシア・ソボレワ、ヴィクトル・レベデフ、ファルフ・ルジマトフ(ゲスト) ほか
 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 

■11/24(日)11:30公演
 ソリスト:アナスタシア・ソボレワ、ヴィクトル・レベデフ、ファルフ・ルジマトフ(ゲスト) ほか
 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

 

■11/24(日)16:00公演
 ソリスト:アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ、エルネスト・ラティポフ、ファルフ・ルジマトフ(ゲスト) ほか
 管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー

Official Site:

https://www.koransha.com/ballet/mikhailovsky_ballet2019/

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