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© 2018 by Alexandre Magazine

Issue 007  アレクサンドル・リアブコ&シルビア・アッツォーニ

​至高の芸術家の終わりなき旅

7月31日に開幕する「フェリ、ボッレ&フレンズ」公演の出演者の中で、座長のアレッサンドラ・フェリやロベルト・ボッレと同等の人気を誇るのが、ハンブルク・バレエを代表するプリンシパルのシルヴィア・アッツオーニとアレクサンドル・リアブコ。巨匠ジョン・ノイマイヤーの深遠な世界をこれ以上に表現できる者はいない、まさに至宝と呼ぶべき芸術性の高いペアだ。公私とも名コンビである二人は、ハンブルク・バレエの来日公演だけでなく、世界バレエフェスティバルなど数多くのガラ公演でも来日を重ねている。そしてAlexandre Magazineの名前は、実はリアブコの名前から取られている。それだけ多くの人のインスピレーションを喚起する、至高の芸術家カップルであり、美しい精神性が踊りに現れて光り輝くふたりである。
 

アッツオーニがイタリア出身であるということもあり、ふたりはイタリア中を公演してまわるボッレのガラ公演「ロベルト・ボッレ&フレンズ」にたびたび出演し、イタリアの国民的スターであるボッレやフェリとの親交は長い。

 

長年の友情の賜物である「フェリ、ボッレ&フレンズ」

 

アッツオーニ 「私たちはまるで家族のようなのです。2003年に東京で開催された世界バレエフェスティバルで、私たちはロベルトやアレッサンドラに出会い、その後すぐに「ロベルト・ボッレ&フレンズ」公演に出演するようになりました。それ以来の友人ということになります。イタリアの小さな町から大都会まで、たくさんのツアー公演を重ねました。2007年にアレッサンドラが引退ガラ公演を行った時に、そのイタリアツアーにロベルトと共に私たちは出演し、日本でもこの公演は行われました。とても素晴らしく感動的な引退公演でした。アレッサンドラには引退してほしくないと思いましたが、彼女の幸せも祈っていたのです。そして今、人生の異なったステージに立っている私たちは、再び舞台を分かち合うことになりました。その間私たちには子どもが生まれ、バレエ団でも様々なことを経験し、アレッサンドラは舞台に復帰して、成熟した私たちがめぐりあったのです。でもあのころの気持ち、友情とお互いへの尊敬の気持ち、お互いから学ぶ姿勢は変わりません。サーシャ(リアブコの愛称)は、今年の5月にミラノでロベルトと共演しています」

リアブコ 「最初はガラ公演での共演で知り合ったのですが、アレッサンドラは復帰後、ジョン(・ノイマイヤー)が彼女に振付けた『ドゥーゼ』の創作のために長い間ハンブルクに滞在しました。彼女の物語を表現する力の素晴らしさを知り、彼女から多くのことを学んで、それはとてもエキサイティングで特別な経験でした。ロベルトも、ジョンが彼に『オルフェウス』を振付けたためハンブルクに滞在しました。長い時間をかけていつの間にか私たちは親しい友人となったのです。今回の公演では、ロベルトと、友情をテーマにした『作品100~モーリスのために』を踊ります。イタリアでもこの作品を踊ったのですが、お客さんが、あなた方はどれほど長い間友達だったのですか?と聞いてきたので、“15年以上の友人関係です”と答えました。その間特別な友情へと育っていきました。今回みんなが集結したことは、僕たちにとっては素晴らしく特別なことなのです」

 

アッツオーニ 「イタリア人ダンサーの同窓会でもあります。私たちはイタリアの外でキャリアを築き、異なった国で生活してきました。でもこうやって集まると自分たちがイタリア人だ、と実感します。私たちはもう若くないので、いつまで踊れるかはわかりません。だから一緒に踊る機会があれば、最高の時を過ごしたいし、できるだけのことをしたい、そのための努力を毎日しています」

新しい作品を通して、新しい私たちを見せたい

 

ハンブルク・バレエに入団して20年以上が経つアッツオーニとリアブコは、カンパニー最古参であるが、今もなお、新しい領域に挑戦しつつ、若い才能を育てている。今回の公演でも、ノイマイヤーの作品だけでなく、新進気鋭の女性振付家ナタリア・ホレチナの作品や、共演者でもあるマルセロ・ゴメスが振付けた新作などを踊る。

 

リアブコ 「近年はジョンの作品だけでなく、若い振付家の作品をレパートリーに取り入れるために彼らとの仕事もしています。ハンブルク・バレエではバレエ団内の若い才能を育てるための振付プロジェクトを行っていて、そこで生まれた作品もガラ公演で上演しています。今回の公演では、昨年の10月に振付けられたナタリア・ホレチナの作品「フォーリング・フォー・ジ・アート・オブ・フライング」を踊ります。もともとは4人のダンサーのための作品でしたが、今回のためにパ・ド・ドゥに作り直しました。とても音楽的な作品です。世界バレエフェスティバルでも、毎回新しい作品を紹介しており、ハンブルク・バレエ出身の大石裕香やティアゴ・ボアディンの新作を踊ってきました。観客の反応を見るのも楽しくて、いつも良い反響を得ているし、続けたいと思っていることです」

 

アッツオーニ 「今、私たちは、カンパニー内の3人の若手振付家の作品に取り組んでいます。アレッシュ・マルティネスというソリストによる作品は、今まで私が踊ってきた作品と全く違っていて、大きな挑戦でした。笑っちゃうような大胆な衣装を着て、ロボット的な動きで踊り、さらにブレイクダンスのような振付まであるのです。こんな踊りを私が踊ることができるかわかりませんでしたが、できる方法を見つけて挑戦しています。新しいことに挑戦するのはわくわくします。アレッシュにはこの作品に参加することは名誉なことで、うれしい、とお礼を言いました。人生においても、新しい視点を持つことは大事なことです」

リアブコ 「マルセロ(・ゴメス)の作品を踊るのはエキサイティングなことです。マルセロは大切な友人であり、深い敬意を抱いていました。会っている時間は短くても、人間として彼が素晴らしいことはよくわかっていました。今回、初めて彼と踊ります。一緒に彼と稽古をしていますが、すごく楽しんでいます」

 

アッツオーニ 「長年の友人なのに、彼と踊ったことはなかったので、今回は一緒に踊ることができる、やっとつかんだ素晴らしい機会です。お互いのことを学び合うチャンスでもあります。ガラ公演で共演してきましたが、単にダンサー仲間としてではなく、友人として親しくなりました。モスクワ、アメリカ、日本、中国と世界中で同じ公演に出演してきましたが、実際に会う時間は短かったのです。もっと長い時間を過ごしたい、お互いを分かち合いたいと思っていたところ、今回のガラ公演の話があったので飛びつきました。最初から素晴らしいことになるとわかっていたのです。お客様に新しいもの、新しいパートナーシップをお見せできるのが楽しみです」

 

リアブコ 「マルセロは振付家でもあるので、ダンサーとしての彼だけでなく、彼の作品に挑戦できるのはとても面白いことです。彼と踊る『アミ』の音楽はショパンで、友情がテーマですが観る人それぞれの解釈ができる作品です。僕にとっては、マルセロと同じ舞台に立ち、ピアニストが舞台上で演奏し、その音楽に反応するということが大切です。僕たち、そしてピアニストとの力関係と、それをどうやって深めていくことか、ということについての作品だと思っています」

 

アッツオーニ 「『アミ』をサーシャが踊るのを初めて観たとき、“この作品は素晴らしいものになる”と確信しました。何年も前から、このことは実現するだろうと思っていたのですが、本当に実現したのですね」

 

リアブコ 「この作品はひとりで覚えたのですが、今回一緒に短い期間リハーサルを行ったら、すぐに通し稽古ができるようになりました。この作品をマルセロと踊っているととても力強いエネルギーを感じました。特別なエネルギーです」

完璧を求める旅に、終わりはない

 

アッツオーニとリアブコのパートナーシップは、すでに伝説となっているほどで、お互いを高め合う理想の芸術家カップル像そのものだ。陽気でよく笑い、よく話し親しみやすい4歳年上のアッツオーニが、寡黙でどこかミステリアスなリアブコをリードしているように見えるが、思慮深いふたりは、強い愛と絆で結ばれているのが実感される。

 

アッツオーニ 「私たちはとても若い時に出会いました。ふたりとも新しい役に挑んでいる時で、まだ経験も浅かったので、とても大きな挑戦をしていたのです。最初は燃え上がっていましたが、年月を重ねるにつれて、ふたりのエネルギーが溶け合い、同じように呼吸し、ムーブメントの中で同じハーモニーを奏でるようになったのです。今では長年多くの役で共演し、リハーサルを重ね、舞台に立ち続けてきたので、お互いのことを手に取るようにわかります。私生活も共に過ごしているので、舞台の上では自分を解き放ち、お互いを信頼することができます。私たちの動きが同じようにとてもしなやかなことに、お客さんも気づいていると思います。舞台上で輝く、ハーモニーを奏でているカップルなのです」

 

リアブコ  「今でも、お互いに向けてのチャレンジを毎日しています。芸術、バレエ、ダンス、他の芸術でも完璧というものはないし、ゴールにたどり着くことはありません。舞台に立っている瞬間があるだけで、踊り終えたらそれは消え去ってしまいます。常に進化し続けていなければならないし、日々新しい振付を学び、新しい教師から学びます。今回の公演で踊る『アルルの女』ではルイージ・ボニーノが振付指導をしています。私たちのキャラクターやテクニックをさらに純化させるために、彼は厳しく指導しています。何年もの間私たちは共演し続けており、特別な感情を得るためには、もっともっと日々極めなければなりません。毎日少しずつ進めていますし、毎日挑戦し続けることが大事なのです。私たちが生き続けて、芸術を生き永らえさせるためには、新しい作品、新しいプロジェクトにチャレンジし続けることしかありません。完璧を求める旅に終わりはないのです」

 

アッツオーニ  「達成した、と思った瞬間に、進歩は止まってしまいます。成長し続けるためには、目の前に到達点を設定しなければなりません。到達点に向けて、毎日調整するために自分を追い込みます。ラッキーなことに私たちは、お互いに対しても、そのような姿勢で臨むことができます。もう十分やったよね、やりきったよね、ということは私たちの間ではありません。いつだってもっといいものを見せることができる、もっとできる、という気持ちが、生きているという実感を生み出してくれます」

できる限り挑戦し続け、踊り続けたい

 

ノイマイヤーはほぼ毎年新作を発表し、数え切れないほどの名作を生み出してきた。その中でも、リアブコにとっての『ニジンスキー』、アッツオーニにとっての『人魚姫』は、観る者すべてを打ちのめし、心を鷲掴みにするような圧倒的な名作であり、代表作であるが、彼らはそれらの名声に安住することを良しとしない。彼らの愛する作品はどのようなものなのだろうか。

 

リアブコ 「僕にとっての特別な作品はたくさんあるし、異なった意味で特別な作品となっているので、一つの作品とは限りません。観客からも、自分からも、明らかに代表作と言える『ニジンスキー』や『椿姫』がありますが、主役ではない役でも、『オテロ』のイアーゴや『ロミオとジュリエット』のマキューシオなど、お気に入りの役があります。今回の公演で踊る作品は短いものが多いですが、それぞれ異なる作品で、今の僕としてそれらを踊ることができるのが幸せです。ダンスの素晴らしいところは、踊っている瞬間自分は特別な存在であるということです。過去に踊った作品も素晴らしいけど、これから踊る作品はもっと特別な作品になります。お客さんにとっても、これから踊られる作品こそが特別な作品になるのではないでしょうか」

 

アッツオーニ 「お客さんから観た、私の代表作というのはあるでしょうね。『人魚姫』や『椿姫』と思う人は多いでしょう。でも、サーシャが言うように、ツアー公演には持っていかないけどハンブルクでは上演している小さな役柄の中にも、大きな役と同じくらい大切なものがあります。このような作品は、自分のキャラクターの異なった側面や色彩を見つけることを手伝ってくれるし、大きな役柄に真実味を与えるきっかけにもなります。たとえば『マタイ受難曲』には41人ものダンサーが舞台に立つのですが、一人一人に役柄があります。ソロのある役を踊っていますが、最後には全員が一緒に踊ります。コミュニティや社会生活に存在すること、お互いを理解すること、集団の中でいかに存在するか、ということを作品を通して学ぶことができます。このような役を演じることは大切なプロセスです。新しい役に挑戦し、学び、スタジオで挑戦を受けることはかけがえのないことです」

「私たちは最近、ジョージ・バランシン振付の『リーベスリーダー・ワルツ(愛の歌)』を踊りました。美しい作品ですが、これはまた新しい挑戦でした。私たちはもう二十歳ではありません。全く新しいスタイルで踊るのは難しくも、新鮮なことでもありました。自分自身に正直でありながら、自分の最良の部分を見せるという、より良きものを目指すためのたゆみないプロセスでした。そして今、これが私のベストの役だと胸を張って言うことができます。若い時にインタビューを受けた時には、“お気に入りの役はこの作品とこの作品でこれを踊りたい”、と有名な作品の大きな役について話していました。でも年を重ねたら、これらの役は皆経験していますし、今までやってきたことと違ったこと、挑戦しがいのある役に、これからも挑み続けたいと思います。できる限り、私は挑戦し続け、踊り続けたいと思います。ダンサーに終わりはありません」

 

芸術を届けることで、困難の多い現代の世界をより良いものにしていきたいと口をそろえる二人。そのためには、世界的なスターとなった今もたゆまぬ努力を続け、日々地道な努力を重ねて自らを磨き続ける。「ボッレ、フェリ&フレンズ」での彼らの舞台を通じて、その崇高な精神性の一端に触れ、心震える体験を味わってほしい。

Costume provided by YUMIKO  https://www.yumiko.com/jp_jp/

PHOTOGRAPHER/VIDEOGRAPHER: 井上ユミコ

STYLIST: Kanako Higashi

HAIR AND MAKEUP: KOUTA at eight peace

INTERVIEWER: 森菜穂美 

SPECIAL THANKS : 公益財団法人日本舞台芸術振興会                 

<フェリ、ボッレ&フレンズ東京公演概要>

 

日程

Aプロ
7月31日(水) 19:00

8月1日(木) 19:00

8月3日(土) 13:00

Bプロ
8月3日(土)18:00

8月4日(日)15:00

 

会場

文京シビックホール 大ホール

 

入場料

S席 18000円
A席 16000円
B席 14000円
C席 11000円
D席 8000円

▼オフィシャルサイト

https://www.nbs.or.jp/stages/2019/ferri-bolle/

Aプロ

「カラヴァッジオ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ 音楽:ブルーノ・モレッティ
出演:ロベルト・ボッレ&メリッサ・ハミルトン

 

「フォーリング・フォー・ジ・アート・オブ・フライング」
振付:ナタリア・ホレチナ 音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

 

「ボレロ」
振付:ローラン・プティ 音楽:モーリス・ラヴェル
出演:上野水香&マルセロ・ゴメス

 

「アミ」
振付:マルセロ・ゴメス 音楽:フレデリック・ショパン
出演:マルセロ・ゴメス&アレクサンドル・リアブコ

 

「クオリア」
振付:ウェイン・マクレガー 音楽:スキャナー
出演:ロベルト・ボッレ&メリッサ・ハミルトン

 

「アルルの女」
振付:ローラン・プティ 音楽:ジョルジュ・ビゼー
出演:シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

 

「マルグリットとアルマン」全編
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:フランツ・リスト
出演:アレッサンドラ・フェリ、ロベルト・ボッレ、マルセロ・ゴメス、アレクサンドル・リアブコ、他

Bプロ

「バーンスタイン組曲」
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:レナード・バーンスタイン
出演:アレッサンドラ・フェリ、シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ、カレン・アザチャン、アレクサンドル・トルーシュ、マルク・フベーテ

「リベルタンゴ」
振付:高岸直樹 音楽:アストル・ピアソラ
出演:上野水香&マルセロ・ゴメス

 

「オルフェウス」よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー  音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキーほか
出演:ロベルト・ボッレ&シルヴィア・アッツォーニ

 

「TWO」
振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
出演:ロベルト・ボッレ

 

「アモローサ」
振付:リッカルド・グラツィアーノ 音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:シルヴィア・アッツォーニ&マルセロ・ゴメス

「作品100~モーリスのために」
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:サイモン&ガーファンクル
出演:ロベルト・ボッレ&アレクサンドル・リアブコ

 

「フラトレス」(「ドゥーゼ」より)
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:アルヴォ・ペルト
出演:アレッサンドラ・フェリ、アレクサンドル・トルーシュ、カレン・アザチャン、カーステン・ユング、マルク・フベーテ

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